この記事は「賃貸物件の退去時の費用負担の所在が分からない」というような方向けに書いています。 この記事を読むことで自信をもって修理箇所費用を請求することが出来るし、それを拒否することができます。
私はこの岡山エリアで10年間以上、不動産業に従事しています。 現在は、「賃貸管理・仲介」「売買買取・仲介」「テナント誘致」「定期借地」「リフォーム・リノベーション」「講師業(宅建)」「不動産コンサル(資産活用)」、 そして岡山・大阪を中心に「不動産投資」を行っています★
★CPM(米国公認不動産管理士)が在籍する不動産屋★
「買いたい」 「借りたい」 「売りたい」 「貸したい」
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私たちは不動産をロジカルな視点から お客様それぞれの「想い」にお応えします。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
賃貸経営は嬉しいことだけではありません。
むしろ大変なことが多い気がします。
その中で、一番大変といってもいい業務の一つが 【退去立合】です。
引越しを経験されたことがある方は、知っての通り、
- 貸主:借主に費用を支払ってもらいたい
- 借主:費用は支払いたくない
という、相反する現場での戦いが始まります。
もちろん、借主がキレイに使っていたら、その戦いもないのですが、やはり、住んでいたら傷の一つや二つは見つかります。
そんなとき、不動産管理会社がきちんとした知識があれば、トラブルが起こることはありません。
今回は、そんな馬鹿な管理会社に出くわしてしまった借主さんや、直接管理をしている貸主の退去立ち合いに出くわしてしまった借主さんに向けてお話をします。
退去立合に臨むにあたって
①賃貸借契約書を確認
契約書に書かれている内容が、すべてです。
仮に裁判になった際は、この契約書を元に答弁することになります。
②東京ルール
みなさん東京ルールって聞いたことありますか?
退去時にトラブルになるケースが増えたため、「借主を保護するため」の目的のために、東京都が2004年に設けたガイドライン(賃貸住宅紛争防止条例)です。
不動産業者は借主に説明義務があるので、借主さんは必ずサインをしていると思われます。
その他にも下記の内容を仲介業者は説明を行う義務があります。
- 退去時の原状回復
- 入居中の設備修繕
- 契約においての特約条項
- 修繕及び維持管理等に関する連絡先
こちらは、条例であるため、「東京都のみに限定されているルール」です。
他の都道府県では適応はされません。
しかし、このルールに基づいて、裁判の判例などが明示され、必然的にこのルールが全国へ広がったという背景があります。
そのルールは、「貸主負担」と「借主負担」の境界をはっきりと明記しています。
《貸主負担項目》
賃貸人の負担となるもの | |
【床(畳・フローリング・カーペットなど)】 | |
1.畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの) 2.フローリングのワックスがけ 3.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡 4.畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの) | |
【壁、天井(クロスなど)】 | |
1.テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ) 2.壁に貼ったポスターや絵画の跡 3.壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの) 4.エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡 5.クロスの変色(日照などの自然現象によるもの) | |
【建具等、襖、柱等】 | |
1.網戸の張替え(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの) 2.地震で破損したガラス 3.網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの) | |
【設備、その他】 | |
1.消毒(台所・トイレ) 2.浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの) 3.鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合) 4.設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの) |
《借負担項目》
賃借人の負担となるもの | |
【床(畳・フローリング・カーペットなど)】 | |
1.カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足等の場合) 2.冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合) 3.引越作業等で生じた引っかきキズ 4.フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの) | |
【壁、天井(クロスなど)】 | |
1.賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合) 2.賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合) 3.クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食 4.タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合) 5.壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの) 6.賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡 7 .落書き等の故意による毀損 | |
【建具等、襖、柱等】 | |
1.飼育ペットによる柱等のキズ・臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合) 2. 落書き等の故意による毀損 | |
【設備、その他】 | |
1.ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合) 2.風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合) 3.日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損 4. 鍵の紛失または破損による取替え 5.戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草・排水桝掃除 |
もちろん、ペットや、タバコなどによる過失は借主負担になりますが、全額負担するの? と、なりますよね。
次に、考慮されるのが、耐用年数です。
下記の図は備等の経過年数と賃借人負担割合(耐用年数6年及び8年・定額法の場合)、賃借人負担割合になります。
横軸は経過年数 縦軸は借主の負担割合を示します。
突然ですが、問題です。
《問題》借主の負担金額はいくらになるでしょうか?
- 新築で入居して2年経過して退去した。
- 借主の過失は壁クロス1面、落書きのため
- クロス1面の張替え費用は5万円
※壁のクロスの耐用年数は6年です
答え:借主負担割合は 下記赤丸によると、2年 → 約65% × 50,000円 = 32,500円
ちなみに「新築」や「入居期間が短い」物件の退去立ち合いが一番もめます。
また、耐用年数とは別の考えもあります。
例えば、 6年以上経過したクロスの価値は、上記図によると借主負担割合が「0」と、いうことになり、6年以上住んでいたら、クロスに落書きしようが汚そうがクロスの費用は0円近くなるのです。
(価値が0になることはありません) しかし、 そのクロスの落書きや汚れを落とすために、本来必要でなかった張替えの費用が発生するので、クロスの費用が0であったとしても、新しく張り替えするために職人さんの「人件費」という、最低限の費用が発生するので、借主さんはその人費用を支払う必要があります。
また、この耐用年数は原則の考えであり、「特別な損失があった場合は別途、請求」とう事例もございます。
紛争等でトラブルになった場合は、お近くの消費者センターまたは弊社までご相談ください。
耐用年数について
壁紙、クッションフロア、カーペット・・・6年
畳表替、障子紙、襖紙・・・消耗品とみなすので経過年数は考慮しない
フローリング・・・経過年数を考慮しません。
※フローリング全体張り替えの場合・・・建物の耐用年数に基づき残存価値を計算し、負担割合を決めます
流し台・・・5年
冷暖房器具(エアコン等)、インターフォン・・・6年
こちらは経過年数を超えた設備等であっても、使用可能な場合があり、このような場合に故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてまった場合には、借主は本来機能していた状態にまで戻す必要があります。
すなわち経過年数が超えても0円でありませんのでご注意くださいませ。
まとめ
上記の内容は退去立ち合いの一部です。 私が大家さんに言いたいのは、 「入居者が壊した、汚したからといって、全額請求することはできません。」
そこでトラブルになって時間と費用を要するぐらいなら、本業をしっかり勉強して、早く新しい客付けしたほうが賢いですよ。