目次
はじめに|今回は「不動産がダメになる話」ではありません
2026年度(令和8年度)税制改正大綱が公表され、不動産・相続の分野では大きな注目を集めています。
ただし、最初に大切な前提を整理しておきます。
税制改正大綱は、現時点では“方針”であり、まだ法律として確定したものではありません。
本記事では、
税制改正大綱に示された内容を前提に
「仮にこの内容が法制化された場合、不動産を使った相続対策はどう変わるのか」
を、できるだけ分かりやすく整理します。
本記事で扱う「大きな論点」は2つだけ
今回の税制改正大綱を、不動産・相続の視点で見ると、実質的な論点は次の 2つ に集約できます。
論点①相続前に取得した「貸付用不動産」の評価はどう変わるのか
論点②不動産小口化商品は、今後も相続対策として有効なのか
以下、この2点について
「いままで」と「変更案」を比較しながら解説します。
第Ⅰ部
相続前に取得した「貸付用不動産」はどう評価されてきたのか
― そして、何が見直されようとしているのか ―
1|いままでの相続税評価の基本構造
● 土地は「路線価」で評価されてきた
相続税では、土地は実際に売れる「価格(時価)」ではなく、国税庁が定める「路線価」を基準に評価されます。
※路線価は、一般に実勢価格の約80%前後とされています。
● 賃貸している土地は、さらに評価が下がる
土地を第三者に貸している場合、「自由に使えない土地」として貸宅地評価が適用されます。
2|【数式】いままでの評価方法(貸付用不動産)と具体例
土地評価の基本式(従来)
土地評価額
= 路線価 × 土地面積 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合)
■一般的な目安
借地権割合:60%
借家権割合:30%
【具体例】
路線価:30万円/㎡
土地面積:200㎡
Step① 路線価評価
30万円 × 200㎡ = 6,000万円
Step② 貸宅地の減額率
60% × 30% = 18%
Step③ 最終的な土地評価額
6,000万円 ×(1 − 0.18)
= 4,920万円
建物の評価(従来)
- 建築費:3,000万円
- 固定資産税評価額:約2,100万円
※購入費の約70%前後とされています。
2,100万円 ×(1 − 30%)
= 約1,470万円
▶ いままでの合計評価(例)
| 区分 | 評価額 |
|---|---|
| 土地 | 約4,920万円 |
| 建物 | 約1,470万円 |
| 合計 | 約6,390万円 |
👉 本来、土地と建物の取得価額が約9,000万円であっても、
相続税評価額は6,390万円程度になる
つまり、差額2,610万円の評価を圧縮することが可能でした。
――これが、賃貸不動産が相続対策に使われてきた理由です。
3|税制改正大綱で示された「見直しの方向性」
税制改正大綱では、次のような内容が示されています。
「被相続人等が、課税時期前5年以内に、対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(原則として取得価額を基に算定)で評価する」
ポイント整理(※大綱ベース)
- 対象
相続前5年以内に取得・新築した「一定の貸付用不動産」 - 評価方法
路線価等ではなく、
通常の取引価額(時価)
つまり、
▶ 見直し後の合計評価(例)
| 区分 | 評価額 |
|---|---|
| 土地 | 約6,000万円orそれ以上 |
| 建物 | 約2,100万円orそれ以上 |
| 合計 | 約8,100万円orそれ以上 |
時価高騰の都心部であれば、
5年後
9,000万円→15,000万円
相続税対策のつもりで購入したが、6,000万円も高い評価になり、「なにやってるんだ!」という結末も見えてきますね!
※現時点では、
どこまでが「一定の貸付用不動産」に該当するか、
どのような例外が設けられるかは、今後の法令・通達を確認する必要があります。
4|【比較事例】表面利回り6%の物件はどう扱われるのか
ケース設定(仮定)
- 被相続人:75歳
- 相続開始:2026年
- 相続3年前に賃貸アパートを取得
- 取得価額:7,500万円
- 表面利回り:6%
① いままで(従来評価)
- 土地+建物の評価額:約6,390万円
- 評価圧縮:約1,100万円
- 相続税(概算):約1,200万円
② 税制改正大綱ベース(仮に法制化された場合)
- 評価方法:取得価額ベース
- 評価額:約7,500万円
- 相続税(概算):約1,800万円
👉 相続税が増える可能性がある
という整理になります。
※重要な注意点
これは
「必ず否認される」という話ではありません。
ただし、
- 相続直前の取得
- 節税効果が主目的と見られる構造
の場合、
従来と同じ評価が認められにくくなる可能性が示されたと理解するのが適切です。
第Ⅱ部
不動産小口化商品は、今後も相続対策として有効なのか
1|いままで、なぜ小口化商品は相続対策に使われてきたのか
不動産小口化商品は、
- 実物不動産を小口化
- 持分として取得
する仕組みです。
従来は、
- 路線価ベース
- 通達評価
が適用されるケースがあり、
取得価額に比べて、相続税評価額が大幅に低くなる
ことがありました。
2|税制改正大綱で示された見直し案
税制改正大綱では、
不動産小口化商品についても評価方法を見直す方向性が示されています。
大綱ベースの考え方
- 取得時期に関係なく
- 原則として通常の取引価額(時価)で評価
処分価格、売買事例、報告書価格などを基に
評価することが想定されています。
3|【比較】小口化商品の評価イメージ
| 内容 | いままで | 見直し後(案) |
|---|---|---|
| 取得価額 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 相続税評価額 | 約100万円 | 約1,000万円 |
| 節税効果 | 非常に大 | ほぼ無し |
4|導かれる結論(大綱ベース)
不動産小口化商品は、相続税を圧縮する目的の対策としては、成立しにくくなる可能性が高い
というのが、
税制改正大綱から読み取れる方向性です。
投資商品としての価値とは別に、相続対策としては慎重な再検討が必要といえるでしょう。
詳しくは、CPMの同期、三矢さんのyoutubeで解説していますので、牡鹿なれば見てやってください。
まとめ|税制改正大綱が示している“メッセージ”
今回の税制改正大綱は、
「不動産を否定するもの」ではありません。
しかし、
- 相続直前の取得
- 評価差のみを狙ったスキーム
については、
制度として見直す方向性が明確に示された
と読むことができます。
仮にこの内容が法制化された場合、
相続対策としての不動産は、
「節税」から「設計」へ
という考え方への転換が求められることになります。
※重要
※本記事は、令和8年度税制改正大綱の内容をもとに、現時点で想定される影響を整理したものです。
実際の適用関係は、今後成立する法律・政省令・通達等により内容が変更される可能性があります。
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